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今年創業100周年を迎えた横浜ゴムは、東京オートサロンに往年のタイヤを復活させた。
その名は「ADVAN HF TypeD」。これは1981年に同社から発売されたスポーツラジアルで、現在でいうと「ADVAN NEOVA AD08」のご先祖様に当たるタイヤだ。
と言いつつ、ボク自身もこのタイヤは実物を見たことがなかった。だって運転免許を取ったのが'90年、その頃ADVANの最高峰は「GLOVA GLOBA」(アドバン・グローバ)だった。だからこれに「おぉっ!」と反応するのは、50歳以上のセンパイたちだろう。
それでも「タイプDはすごかった」という話はこれまで何度も聞いてきたし、その鉄仮面みたいな面構えを見ても、当時すごかったんだろうなぁ...というのは想像できた。だって81年といえば、左右非対称パターンの国産ラジアルタイヤなんて、超珍しかったはず。左右非対称パターンがなぜすごいのかは、コーナーで荷重が大きく掛かるアウト側のブロックを大きくできるから。今では当たり前になっているけれど、36年も前だったら大騒ぎだったに違いない。
ちなみにタイヤへブランドを持ち込んだのも、横浜ゴムが一番最初。今では「ポテンザ」とか「ディレッツァ」なんていうけれど、そのはしりは「ADVAN」なのですよ。
そこで当時を良く知る大先輩に、タイプDがどんなタイヤだったかを聞いてみたところ「ストリート最強のタイヤだったねぇ」と懐かしそうにこれを話して下さった。
何よりそのタイヤを履いてることをアピールするために
「ファミレスに行ったら、ハンドルはわざと切って停めていた」
という(笑)。もちろんトレッドパターンを見せつけるためだ。
「そして、とにかくうるさかった(笑)。あと暖まりはすごく遅かった。でも一度熱が入ると、奥でグーッと粘る感じが良かったなぁ。今のタイヤのように初期レスポンスは高くないけれど、ハイグリップでしたよ。みんなが憧れたタイヤだったねぇ」。そのプロっぽい発動性やグリップ特性も、このタイヤを伝説にしたひとつの性能なのだろう。
さてそんなタイヤがなぜ今になって復刻されたのか? トレッドパターンだって性能の一部だから、最新ネオバの方が優れているに決まってる。
それは、このタイプDがヒストリックカー向けに提案されたタイヤだからなのだ。横浜ゴムの技術者にインタビューすると「かねてから国内のヒストリックカーオーナー様たちから、自分たちが履けるサイズのタイヤが欲しいという要望が多くあったんです」という。
この気持ちは、とっても良くわかる! ボクも60年代のアルファ・ロメオ(Giulia GTA1300 Junior)を持ってるけど、現代の国産製品には、旧車にマッチするタイヤがないのだ。仮にサイズはあったとしても、それはエコタイヤだったり、コンフォートタイヤだったりするわけ。いくらグリップ力は当時以上だとしても、走りのクルマに、それは履きたくないよね。
もちろんヒストリックカーだってばっちり手を入れたレーサーなら、現代のSタイヤやネオバのようなハイグリップラジアルを履ける。でも当時の味わいを楽しむように乗るなら、そのボディ剛性や、サスペンション剛性に見合ったタイヤが一番気持ちよい。
つまりこのタイプDは、ハイグリップスポーツラジアルとしてではなく、ヒストリックカー用のスポーツラジアルとして現代に甦ったのだ。
今回横浜ゴムが展示したサイズは「195/70R14 91H」。往年の名車、スカイラインGT-Rと同じ「S20」エンジンを搭載した日産フェアレディZ「Z432R」に履かせていたことからも、そのターゲットは60年代後半から70年代以降のヒストリックカーだと思われるが、そのサイズは要望をふまえた拡大計画があるという。
だからクラシックカー市場で高騰する一部の文化遺産的な車以外でも、古いクルマを大切に乗り続けているオーナーが、履いて楽しいスポーツラジアルとしてこのタイプDが復活してくれたら嬉しい。
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横浜ゴム100周年を記念し、ヒストリックカーオーナーへ向け「ADVAN HF TypeD」を復活させた:山田弘樹 originally appeared on Autoblog Japan on Fri, 20 Jan 2017 06:00:00 EST. Please see our terms for use of feeds.
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